夫婦喧嘩の翌日、店長と関係を持ってしまいました
夫婦喧嘩
私の名前は山本敦子、年齢は54歳。
スーパーでパートをしている、ごく普通の主婦です。
家では夫と二人きりで子供はもう独立しています。
夫とは結婚して25年。
自分で言うのもなんですが、結婚以来夫一筋で今まで浮気なんて考えたこともありませんでした。
そんな私がたった一度だけ、夫を裏切ることをしてしまったのです。
ある日の夜、夫と些細なことから口論になり喧嘩へと発展してしまいました。
感情が抑えきれず、ついつい言い過ぎてしまったのです。
いつもなら翌朝には何事もなかったかのように日常に戻るのですが、この日の夫は朝食も食べずにそのまま黙って出勤していきました。
重い気持ちを抱えたまま私もパートに出勤しました。
女たらしの店長
仕事に集中すれば少しは気が紛れるかと思ったのですが、なかなか気持ちは晴れません。
そんな落ち込んでいる私に店長が声をかけてきました。
「山本さん、今日はなんだか元気がないね。どうしたの?」
西野店長は57歳。
若い頃から遊び人で女たらしと評判でした。
今まで何人ものパートの女性と関係をもってきたことは、店では公然の秘密です。
実は私も何度か口説かれそうになったことがありましたが、決して誘いに乗らぬよう距離をとってきました。
おかげで最近では、仕事以外のことで話しかけられることはまずありませんでした。
ですが今回、私が落ち込んでいることを見抜きまた声をかけてきたのです。
「昨夜ちょっと……夫と喧嘩しちゃったんです」
普段ならこの店長にプライベートなことを話すことはまずありません。
でもこの日はつい本当のことを喋ってしまいました。
「そうか、大変だったね。でもそんな時こそ気分転換が大事だよ。仕事が終わったら一緒に飲みに行こうか」
店長の誘いに私は一瞬戸惑いました。
「上手いこと言って。私を口説くつもりですか?その手には乗りませんよ(笑)」
普段ならそう言って断るところですが、今日は家に帰りたくないのと、心が弱っていて誰かと一緒にいたいという気持ちでいっぱいでした。
「まあ……少しだけなら」
と、自分でも信じられないですが、店長の誘いを受け入れてしまいました。
女たらしとわかっていても
仕事が終わって待ち合わせの場所で待っていると、5分遅れて店長もやってきました。
一緒に店を出ると怪しまれるからと言われました。
「慣れてるんだなあ。今までもそうやって何人と関係を持ってきたんだろう……」
それでもここはまだ店の近く。
誰かに見られないか、少しヒヤヒヤしました。
私たちはタクシーに乗って少し離れた駅前の居酒屋に場所を移しました。
最初は少し緊張していましたが食事が進むにつれ、これまであまり好印象を持ってなかった店長と徐々に打ち解けていきました。
少し酔いが回ってくると、家での夫との生活についてまで話しをしていました。
「最近、夫との関係がマンネリ化してるっていうか、ちょっとしたことでケンカしちゃうんです」
店長は私の目を見て、そんな話にも真剣に耳を傾けてくれました。
そして親身になって優しい言葉をかけてくれます。
「ただの女たらしと思っていたけど、本当は思いやりのある男性だったのかな」
今から思えば、女性を落とすためのテクニックなのは見え見えなのに。
そして3杯目のチューハイを飲み干した頃、店長がそっと手を握ってきました。
「大丈夫、何も心配しないで。今夜、僕はただ山本さんに元気になって欲しいだけなんだ」
そんな言葉に私は頷いてしまいました。
自分がこれから何をしようとしてるのか。
それがいけないことなのはわかっていました。
でもこの時は本当に誰でも良かったのです。
店を出ると私たちは自然と手を繋ぎ、引っ張られるまま歩いていました。
どこに向かっているのかはわかっていました。
店長の手に引かれ私たちはホテルに入っていきました。
ラブホに入るのは結婚する前に夫と来て以来25年ぶりです。
そしてその25年ぶりのお相手は、既婚者で、同じ職場の上司でした。
部屋ではまだ緊張している私を店長はそっと抱きよせ優しくキスをしてきました。
全部彼の女性を落とすテクニック。
この手で何人もの女性を抱いてきたのでしょう。
慣れているのがわかりました。
でもわかっていても、それを拒むことはこの日の私にはできませんでした。
誰でもいいから男の人に抱かれたかったのです。
「山本さん……いや、敦子さんって呼んでもいいかな?」
彼の低い声が耳元で囁かれ私の胸が高鳴りました。
男の人から下の名前で呼ばれるのは、夫以外では初めてのことでした。
キスをしながら彼は私の頬を優しく撫でていました。
「ええ……でも、どうせなら、敦子と呼び捨てにしてください」
夫でさえ、私のことを呼び捨てにしません。
でもどうせ抱かれるなら、体だけでなく、心もぐちゃぐちゃにして欲しかったのです。
彼は頷き、そのまま私の手を引いてベッドの方へと導きました。
「ありがとう、敦子。今からは二人だけの時間だよ」
店長の言葉に、私は頷き目を閉じました。
彼の手が私の体に触れるたびに、体の芯からしびれるような感覚が走りました。
遊び慣れた彼の行為に、私はそれまでにないような、とてもいやらしい、はしたない声を発してしまいました。
「お店では、あんなに物静かな山本さん……いや、敦子がこんなにいやらしい声を出すなんて」
「やめて……。はずかしいから言わないで」
仲直り
夜の11時、少し遅くなりましたが私は家に帰りました。
玄関を開けると夫が笑顔で出迎えてくれました。
彼は私に微笑みかけ、何事もなかったかのように「おかえり」と言いました。
その言葉が私の胸に突き刺さりました。
「あ、ただいま……」
私は震える声で返事をしました。
そして夫に抱きつき
「ごめんなさい、ごめんなさい」
わたしは泣きながら、何度も「ごめんなさい」と言って謝りました。
「僕のほうこそごめん。昨夜は僕が悪かった」
「ちがう、ちがうの」
昨日のことじゃない、今私がしてきたことを謝ってるの。
そう言いそうになりましたが、言葉を飲み込みました。
その晩、私は夫と仲直りしました。
翌日、店に出勤するとすこし心配でした。
もし昨日、誰かに見られていたかもと思うとハラハラしていました。
店長と目が合うと彼は私に近づいてきました。
「昨日は楽しかったよ。また今度……」
私は店長の言葉を途中で遮り、
「昨日は本当にありがとうございました。おかげで夫とは仲直りできましたので」
店長は少し残念そうな顔をしましたが、彼との関係は一夜限りで終わらせることにしました。
やっぱり私が愛しているのは夫だけなのです。
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朗読用に脚本を少し変えてあります。