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50代夫婦の恋愛再生物語_初恋と大人の一夜

初恋の続きを、50代で——夫婦交換から始まる物語

セックスって、まだ大事?――夫の突然の問いかけ

「エミコ、君は俺のことを愛してるか?」

ある日の夕食の最中に、突然シンジはそんなことを言った。

「なによ、急に」

私は眉を寄せた。

もちろん、嫌いなんてとんでもない。

結婚して20余年。

子育てもひと段落して、やっと夫婦二人の時間ができたというのに。

「エミコ、君はもう、オレとセックスしなくても構わないって思ってる?」

「ちょ、ちょっと、いきなりなに言いだすの、あなた」

いきなり夫の口から「セックス」なんて言葉が飛び出し、私は年甲斐もなく顔を赤らめた。

「だって…オレ、まだ性欲はあるんだよ」

「だからって、そんな……」

私は笑った。

だがそれは照れ隠しの作り笑いだった。

夫婦のカタチ、変わらないけど変わっていくもの

たしかに、ここ数年、夫婦生活はまったくなかった。

べつに仲が悪いわけでも、冷え切っているわけでもない。

ただ歳とともに、なんとなくそういう気分にはなりにくくなった。

夫シンジもそうだと思っていた。

「エミコは…もう、そういうの、いらないのか?」

もし夫がしたいと言うなら、それを拒むことはしない。しないが、

「だからって、もう何年も無かったから。急にそんなこと言われても」

私がそう言と、シンジはようやく本題を切り出した。

「実はね、こんなのどうかなって、思ってたんだ」

彼がスマホを取り出し、見せてきたのは、どこか怪しいアプリの画面だった。

『リフレカップル』セックスレス専門・夫婦再生マッチング

「なにこれ…!なに、なに、パートナー交換って…!」

「いや、誤解するなよ!?これはあくまで“同意の上で”、“夫婦同士で”、っていうやつで…ほら、意外と同じ悩み持ってる人って多いらしいんだよ。お互い納得した上で、って前提で」

夫婦交換。

それはなんというか、私の予想の遥か、ななめ上をいく提案だった。

“愛してる”の重さと、“満たせない”という負い目

「……正直に言えばね、シンジ」

「うん」

「ちょっとだけ、びっくりしてる。私はあなたのこと、好きだし、今でも愛してる。あなた以外の人に抱かれるなんて想像できないし、したくもない」

「でも私、あなたを満たせてないって、ずっと心のどこかで負い目だったの」

そこまで言って、私は心を決めた。

「だから、もしあなたがそれを望むのなら」

私は思い切って、彼の提案を受け入れることにした。

一旦やると決めると、私の気持ちもだんだん高揚してきた。

「大丈夫だって。ちゃんとプロフィール見て、いい夫婦を選ぶから」

私たちはアプリを一緒に覗き込んだ。

年齢や地域、希望する相手像まで、まるで婚活アプリのようだった。

二人とも妙に盛り上がっていた。

「この人たち、どう?医者と看護師の夫婦。なんか、いい感じじゃない?」

「へえ…50歳と53歳?うちとほとんど一緒ね」

そして、マッチングは成立した。

マッチング成立。そして現れたのは…まさかの初恋の人

週末、お相手の夫婦と、ホテルのレストランで待ち合わせをした。

都内のとある高級スイートルームがあるホテル。

私の緊張はMAXだった。

「やだ、心臓が飛び出しそう……」

ホテルのロビーで待っていると、向こうからスラリとした紳士と、おとなしそうな雰囲気の女性がやってきた。

その紳士が、私を見た瞬間、微かに目を見開いた。

そして、私もまた、その顔を見た瞬間、40年前、小学生の頃の記憶が一気によみがえった。

(え、うそ……ひろし君?)

小学校の頃、クラスのみんなには内緒で交換日記をしていた、あのひろし君。

私の初恋の相手。

秀才の彼は中学受験で私立に進学し、それっきり会うことはなかった。

(まさか、こんなところで再会するなんて…!)

相手のひろし君も、気づいているようだった。

「どうも、初めまして。ひろしと申します。こちらは妻のまさみです」

「こちらこそ初めまして。エミコと言います」

まるで初対面のように、冷静に挨拶を交わしたが、心の中は嵐が吹き荒れてるようだった。

40年ぶりの再会、心だけがざわついていた夜

まずはホテルのレストラン、4人で食事。

いきなり夜ではなく、お互いの親睦を深めるためだ。

案内された席は、広い窓から都心の夜景が見渡せ、間接照明がほどよく落ち着いたムードを醸し出している。

まるで映画のワンシーンのようだ。

四人がテーブルにつくと、料理とワインが運ばれてきた。

「それでは…乾杯」

カチン、と4つのグラスが重なり、少しだけぎこちない空気が流れた。

だが、それも一瞬。

食事とお酒が進むと、男性二人は饒舌になってきた。

でも私はその会話の内容が頭に入ってこない。

(今日、これから、私とひろし君は、そういうことに…?)

もう夜のそれしか、頭の中にはなかった。

夫の隣にいる彼女を見て、なぜかほっとした私

一方ひろし君の妻、まさみさんは終始にこやかにうなずいたが、ほとんど言葉は発しなかった。

まさみさんは無口でおとなしいタイプの人だった。

私はまさみさんを見て、安心した。

「シンジは今夜、この人を抱くんだ」

最初は少しだけ嫉妬心が起こった。

「でもこの人だったら、別にいいかな」

そう思ったりもした。

扉の向こう、忘れていた胸のざわめき

それぞれの部屋へ。扉が閉まる音が心に響く

食事が終わり、

「じゃあ、そろそろ…部屋に行きましょうか」

シンジは皆に、最終確認をするように言った。

「……うん。そうね」

「それでいいですか、博さん?」

「ええ。まさみも、それで大丈夫?」

「……はい」

私たちは夫婦ではない、今夜のパートナーと腕を組み、それぞれの部屋に入った。

ドアが閉まる音が大きく聞こえた。

「エミちゃん!」「ひろし君!」名前を呼び合う奇跡の夜

「ひろし君!」

「エミちゃん!」

部屋に入って、二人きりになるなり、私たちは互いの名前を呼んだ。

そしてふたりは同時に笑い出した。

「最初から気づいていたよね?それなのに初対面のふりして」

「エミちゃんこそ、“はじめまして”なんて…」

恥ずかしさで顔が熱かった。

「まさか、こんな再会の仕方があるなんて、夢にも思わなかったよ」

「ほんとに…ね。お互い…夫婦になって、しかも……こんな場で」

「しかも、今日はこれからって、……ねぇ」

「やめてよ、もう…!そんな言い方したら、余計に緊張するでしょ…!」

私はベッドの端に腰を下ろし、思わず枕を抱きしめた。

するとひろし君も対面のソファに腰掛けた。

お互いの視線が合った。

懐かしくて、くすぐったくて、でもあたたかい。

まるで40年前にタイムスリップしたような感覚だった。

「そういえば…オレ、あの交換日記のノート、まだ持ってるんだ」

「えっ!?まさか、うそでしょ…」

「ほんと。押し入れの奥にしまってあった。小学校の卒業文集と一緒に」

「やだぁ……バカぁ」

笑いながら、私は両手で顔を隠した。

交換日記と図書室、あの頃のままのときめき

私たちは小学生のとき、クラスのみんなには内緒で交換日記をしていた。

受け渡しはいつも放課後の図書室。

そのとき偶然手が触れた瞬間に、私の顔がまっかになったこと。

卒業最後の日に「中学に行っても忘れないよ」と書かれていたこと。

あれから、もう40年近く経っているのに、なぜこんなにも鮮明に思い出されるのだろう。

(でも、今は…あの頃とは違う。私たち、どちらも結婚してるし…今日の目的は……)

どうしよう。こんな展開、予想してなかった。

でも、不思議だった。

ほんの数時間前まで

「知らない人と夜を過ごすなんて」

と不安でいっぱいだったのに、その相手があの“ひろし君”だとわかった瞬間、気もそぞろになった。

(ひろし君となら、大丈夫)

そう思えたことが、なによりも自分を驚かせた。

時計の針は、すでに22時を過ぎていた。

夜は、まだこれからだった。

大人になっても、恋は恋。

「今夜は…恋の続きをしようか」手をつないだ瞬間の記憶

「ほら、エミちゃん、こっち来て」

そう言って、ひろし君がソファーの隣のスペースをぽんぽんと叩いた。

私は枕を抱えたまま、ちょっとだけ困った顔をして横に座った。

ひろし君の隣に座ると、ソファのクッションが少し沈んで、距離がぐっと縮まった。

間近で彼の横顔を見て

(……変わってないな、ひろし君)

そう思った瞬間、横からそっと差し出された手が、私の指に触れた。

「……なに?」

「いや、手、つないでもいいかなって」

「いいわよ、もちろん。だって今夜はそれ以上のことを……するんでしょ、わたしたち」

手を繋ぐだけじゃなく、私は指を絡めていった。

「……ねえ、ひろし君」

「うん?」

「小学校の時、私たち交換日記をしていたけど、あれ、付き合っていたことになるのかな?」

「え、なるんじゃない?」

「だってキスもしなかったし、手も繋いだことなかったよ」

そういえば、交換日記の最後のページに、“本当はエミちゃんとキスしたかった”って書いてあった。

きっとお互い、手も繋ぎたかったし、デートもしたかったし、キスもしたかった。

でもそんなことは、何もなかった。

だって私たち、まだ小学生だったから。

そして私が目を閉じると、次の瞬間、唇にそっと触れたのは、まるで羽のようなやわらかい彼の唇だった。

(……これが、ひろし君の、キス……)

心臓が、ドクン、と大きく脈打った。

50歳を過ぎて、キスだけでこんなにドキドキするとは思わなかった。

「オレの目には、12歳のエミちゃんに見える」

「……エミちゃん、可愛い」

「やめてよ…可愛いなんて。53歳のおばさんに言うセリフじゃないわ」

「オレの目には、12歳のエミちゃんに見える」

「……バカ」

言いながらも、顔が緩む。

さっきまで緊張で張りつめていた心が、ふわっと溶けていった。

「ねえ、ひろし君」

「ん?」

「わたし、恥ずかしいの。53歳の、こんな体を男の人に見せるのが。せめてあと10年若かったらって思うわ」

「大丈夫だよ。オレだって53歳だ」

小学生のころ、交換日記を渡すときに見せたあの笑顔と、まったく同じだった。

そう言われ、私は目を閉じた。

全てをこの人に委ねる決心がついた瞬間だった。

大人になった二人

それは、まるで初恋の続きをなぞるような、ぎこちなくも丁寧なキスだった。

やがて、ひろし君は私の頬を撫で、首筋に唇を落とす。

そのたびに、私の身体はゆっくりと、ゆるやかに開いていった。

「ひろし君……あたし、男の人にこんなふうに愛されたの、久しぶり……」

「エミちゃんが、きれいだからだよ。いままで会ったどの女性よりも」

「うそばっかり……でも……うれしい……」

身体が重なるたびに、昔交わした言葉の断片が、思い出される。

“エミちゃんのこと、もっと知りたいな”

“卒業しても、ずっと友だちでいようね”

“好きって……言いたかったのに”

言えなかったことも、叶わなかったことも、今、この瞬間すべてが報われるようだった。

ふたりの息遣いが重なり、まるで時を忘れたように、夜はふけていった。

初恋は、大人になって完成する

朝の光の中、ふたりで迎える、やさしい朝

気づけば、夜は明けていた。

ホテルの部屋のカーテン越しに、朝の光が静かに差し込んでいた。

私は自分の手が、ひろし君の手を握ったまま眠っていたことに気づいた。

(うそ……寝ちゃってたんだ、それもこんな格好で)

私たちは二人とも裸のまま、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

ひろし君も目を覚ました。

「おはよう、ひろし君」

「おはよう。朝からエミちゃんが見れて、今日もいい一日になりそうだ」

私たちは笑いながら、シーツの中で体を寄せ合った。

「ありがとう。私、昨夜のことは一生忘れないわ」

「俺も。絶対忘れないよ」

その言葉を聞いて、私は彼に自分からキスをした。

“一夜の関係”が、私たちの夫婦にもたらしたもの

その後、私たちは身支度を整え、部屋を出た。

ロビーでは、シンジとまさみさんが先に待っていた。

4人が揃うと、誰からと言うわけでなく、自然と元のパートナーのもとに戻った。

「ありがとうございました」

「またご縁がありましたら」

また他人行儀な言葉遣いに戻っていた。

二組の夫婦は、それぞれの手を取り合い、別々にホテルをあとにした。

この想いは、しまっておくものか、開けてしまうものか

「ありがとう」――夫婦って、きっと帰る場所

家に帰って、私たちはリビングのソファーに並んで座った。

言葉は交わさずとも、不思議と空気は穏やかだった。

緊張も、違和感も、不自然な気まずさもなかった。

「……エミコ、今日ありがとう」

「……ううん。こっちこそ、ありがとう」

「楽しかった?」

「うん、楽しかった」

私はシンジの手をそっと握った。

その手は、ほんの少しだけ汗ばんでいて、だけどとてもあたたかかった。

「コーヒーが飲みたくなってきた」

「じゃあ今日はオレが淹れるよ」

そう言って、シンジがコーヒーを淹れてくれた。

振り返って笑いかける夫に、私も自然と笑顔を返す。

私は、シンジの笑顔を見ながら思った。

――夫婦って、不思議だ。

いろいろなことがあっても、それでも最後に帰ってくる場所は、やっぱりここなんだなって。

ポケットの中のメモ。それは、もう一つの扉の鍵だった

コーヒーを飲みながら、ふと、スカートのポケットに手を入れると、何かが指先に触れた。

小さく折りたたまれたメモだった。

「……え?」

シンジの目を盗んで、そっと開いてみる。

そこには、きれいな字で、携帯番号とメールアドレスが書かれていた。

「もしまた会いたくなったら連絡ください。ひろし」

1回きりだと思っていたのに。

「……どうしよう」

メモを握ったまま、どうするか、すぐには決められなかった。

とりあえず私は、引き出しの奥、誰も開けないアクセサリーボックスにそっとしまった。

(完)

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