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くらす荘で暮らす人たち

くらす荘物語 #1

春遠からじ!?

オレの名は優作。

今年で50歳になった。

実は彼女いない歴、イコール年齢。

恋愛経験はほぼゼロと言っていい。

風俗経験があるため、厳密には童貞ではないが、それは恋愛とは呼べないだろう。

そんな俺が、シェアハウスの入居者募集に応募した。

若い男女が、一つ屋根の下で共同生活をし、時には恋愛に発展したりする。

ドラマなどでよく見る、そんなシェアハウス生活に憧れていたからだった。

シェアハウスというと、普通は若者が住むイメージだ。

だがこのくらす荘は、50歳以上、限定のシェアハウスだった。

くらす荘という名前は、生活の暮らすと、学級のクラスをかけたものだった。

このシェアハウスは、もう一度青春時代にもどりたいと思っている、いわば大人のセカンド青春の家だったのだ。

もっともクラスの3軍だったオレには、青春なんて、セカンドどころかファーストもなかったけどね。

くらす荘の管理人、京子さんは55歳、未亡人だった。

10年前に、旦那さんを病気で亡くして以来、このくらす荘を一人で管理している。

入居初日、彼女はオレに、このくらす荘での決まりを教えてくれた。

「くらす荘へようこそ。

ここは皆さんが10代の頃にもどって、学校のクラスのような気持ちで生活する家です。

そのためにいくつかルールがあります」

共有スペースの使い方、掃除当番、私物の管理などについて説明があった。

「それと、もうひとつ重要なルールがあります」

管理人さんの、声のトーンが少し上がった。

「住人同士での、男女交際は禁止です」

それを聞いて、一瞬オレは目が点になった

今ここでは、男女3人ずつ、計6人のかたが生活しています。

しかしハウスは、出会いの場ではありません。

恋愛がからむと、人間関係が崩れるのは、中高生でも大人でも一緒ですから」

もともと恋愛には縁がなかったオレだ。

むしろスッキリして、その方がいいかもしれない

「それから自慰行為、オナニーも禁止です。部屋が臭くなりますので」

オレは苦笑いした。

「それと……これは少し気になることなのですが——」

管理人さんは少しだけ困ったような表情になった。

「実は、このハウスに新しく入居された男性は、なぜかすぐに退去されてしまうんです。

最初はいじめでもあるのかと思ったのですが、そうではないみたいで。

理由は分かりませんが、もし何か気づいたら、すぐに教えてください」

一緒に住もう

こうしてオレは、くらす荘の住人になった。

男は最年長の一馬さんを筆頭に、清四郎さん、吾郎さん。

女性は双葉さん、三津子さん、六花さん。

そして部屋は女性は1階、男性は2階。

俺の部屋は2階の一番手前だった。

俺はくらす荘で最年少の住人だった。

ハウスの住人たちは皆フレンドリーで、すぐに馴染むことができた。

特に夜のリビングでの談笑は、まるで学校のクラスのような気楽さがあった。

リビングで皆とテレビを見ながら世間話をしたり、他愛のない話で盛り上がったり。

最初は「熟年のシェアハウスなんて、地味で退屈だったらどうしよう」

そう心配していたが、取り越し苦労だった。

俺はここにきて、本当に良かったと思った。

隣は何を…!?

入居して3日目の夜のことだった。

俺は2階の自室で、ひとり本を読んでいた。

すると、誰かがそっと、階段を上ってくる音が聞こえた

( こんな時間に誰だろう?)

ドアの隙間から廊下を覗くと、女性の誰かが、隣の部屋に入っていくのが見えた。

隣は一馬さんの部屋だった。

5分後には、別の誰かが上がってきて、今度は清四郎さんの部屋に入っていった。

そして最後は、吾郎さんの部屋だった。

(まさか……)

やがてしばらくすると、それぞれの部屋から、小さく押し殺した、喘ぎ声が聞こえてきた。

それは明らかに、男女がセックスをしている声だった。

そして男女の荒い息遣いに、ギシギシとベッドが軋む音。

ここでは夜になると、女性が男性の部屋に通ってくる。

いわゆる、夜這いが行われていた。

1時間もして静かになると、女性たちが部屋に帰っていくのが分かった。

(まさか、こんなことが……)

確かにいくら恋愛禁止だと言っても、規則なんかで男女の気持ちを縛れるはずがない。

それでも6人全員が、3組のカップルとして成立していることに驚いた。

オレは自分が10代だった頃を思い出した。

周りでみんなカップルになり付き合いはじめていたのに、

自分だけ蚊帳の外だった10代の頃を

くらす荘の昼と夜

次の日の朝

リビングで、みんな普通に朝食をとっていた。

(昨夜この人たちは全員、誰と誰かはわからないが、セックスをしていたんだ……。誰と誰だろう……?)

オレは朝から、そんなことばかり考えていた。

そしてもうひとつ、気になったのは管理人さんのことだった。

(管理人さんはこのことを知っているのか?)

夜中に同じ階の誰かが部屋を出れば、ふつう気がつくだろう。

ましてや2階に上がっていけば、すぐに分かるはずだ。

いや、きっと管理人さんも、本当はわかっているにちがいない。

でも、だったらどうして……

俺は混乱してきた。

仲よき事は

夜這いは決まって火木土の週に3回行われていた。

特に週末土曜日は、少し早めに女性がやってきて、早朝まで部屋にいることが多かった。

みんな50代60代なのに、随分お盛んだった。

オレは誰と誰がカップルなのか、見極めようと思った。

だが6人とも、みんな平等に仲が良かった。

オレは観察を続けたがわからなかった。

唯一、男女の年長の一馬さんと双葉さん。

確信は持てなかったが、この二人だけは「ひょっとしてと思った。

ある日、たまたまリビングで、オレと一馬さんと双葉さんの3人になったとき、

思い切って聞いてみることにした。

「お二人は付き合っているんですか」

オレがストレートにそう聞くと、一馬さんは少し苦笑いした。

「うーん、ちょっと違うかな。実は俺たちは、元夫婦なんだ。

ここで出会って、5年前に結婚した。そして一度は、くらす荘を出たんだ。

でも2年で離婚して、二人ともまたここへ戻ってきた」

そして双葉さんも

「ここは私たちにとって、実家みたいなところだから」

と言って笑った。

「なるほど、元夫婦でしたか。どうりで。ここの人たちは、みんなすごく仲がいい。

中でもお二人は、特に親密な感じがしたので、てっきり付き合ってらっしゃるんだと思いました」

そしてオレは続けた。

「このハウスでは、3組のカップルがいますね。

夜になると、それぞれ男性の部屋に、女性が夜這いにやってくる。

いったい誰と誰がカップルなのか、ここ何日か、みなさんを観察していました。

しかし僕にはわかりませんでした。よかったら、教えてもらえませんか」

そう聞くと、一馬さんが答えてくれた。

その答えは大変驚きだった。

「実はね、誰も特に付き合ってはいないんだよ」

最初、オレはその意味がわからなかった。

「俺たち6人は、それぞれ平等な形で、パートナーをシェアしているんだ

ひとことで言うなら多夫多妻の関係なんだよ」

そして双葉さんが、笑いながら続けた。

「週に3回、一人に偏ることがないように、全員平等にローテーションしながら、夜を楽しんでいるのよ」

多夫多妻とか、平等にローテーションとか。

ほぼ魔法使いのオレには、想像もできない世界だった。

「優作くん、あなたも入りたいでしょ?」

その言葉に、俺はドキっとした。

今までろくに女性と付き合えず、オレは風俗でしかセックスの経験がない素人童貞だった。

それがいきなりこんな、夢のような世界が目の前にあるなんて。

「入りたいです。ぜひ僕も、仲間に入れてください」

そう言おうとした。しかし

「申し訳ないが、優作くんが我々の中に入るには、ひとつ問題がある。

この関係は、男女が平等な数だからこそ成り立っている。

ここに優作くんが加わると、男の数が多くなり、不平等になってしまうんだ。それはダメだ。

優作君が仲間に入りたいのであれば、今の誰かが抜けるまで待つしかない。

「みんな最初は待つというけど、結局半年もしないうちに、待ちきれずに出ていくのよ」

男の新規入居者が、すぐに出ていく理由がこれだった。

こんな夢のような世界が、目の前にあるのに。

ずっとお預けをくらったら、誰だって我慢できなくなるのは当然だ

オレもいったいいつまで待てば、自分の順番が回ってくるんだろう。

それは半年なのか、1年なのか。

その間ずっと、みんなが夜を楽しんでいるのを、ただ指を咥えて見ているだけなのか。

しかしこの時、オレはあることに気がついた。

開かれた扉

週末の夜がやってきた。

オレは自室で、耳を澄ましていた。

夜の10時を回ったころ、階段の軋む音がした。

1階の女性たちが、順番に2階へ上がってきた。

扉の開閉音、男女の会話。

そしてしばらくすると、3つの部屋から、男女の夜の営みの声が聞こえ出した。

(今だ……)

俺は意を決して部屋を出た。

向かうのは1階、京子さんの部屋だ。

オレは重大なことに気がついていた。

くらす荘は満室になると、男性が4名、女性が3名と、男女の数が合わなくなる?

いやいや、ちゃんと4人目がいるじゃないか。

オレは管理人室の扉の前で、深く息を吸い込んだ。

ドアをノックしようとした、その時だった。

扉越しに、京子さんの荒い息遣いが聞こえてきた

それはとても淫靡で、いやらしい声だった。

もしや!?

オレはノックもせずに、いきなりドアを開けた。

部屋の中では、京子さんが自らを慰めていた。

オレをみて驚いた京子さんは、あわてて毛布で自分の体を隠した。

「ノックもせずに失礼ですよ」

そう言われたが、オレは無視して、そのまま部屋に入った

「規則でオナニーは禁止じゃなかったんですか」

そう言うと、京子さんは顔を真っ赤にして横を向いた。

天井からは、ベッドが軋む音や、喘ぎ声が聞こえていた。

「意外と聞こえるもんなんですね」

京子さんは黙って頷いた。

こんな声や音を、しょっちゅう聞かされたら、誰だって欲情してしまう。

ましてや京子さんは、未亡人になって10年。

それを解消してくれる、パートナーも持たなかった。

「みんなが夜這いしているのは、ずっと前から知っていました。

たしかにハウスの風紀を乱すことは許されません。

でもそれが、皆さんの幸せだったらと考えると、どうしていいのかわからなかったのです」

そんな京子さんに、

「京子さん……京子さんは、本当にそれでいいんですか?」

オレがそう言うと、彼女はハッとした表情を見せた。

「京子さんは、このシェアハウスを作り上げた人でしょう。

でも今は、ただ管理してるだけになっている。

本当は京子さん自身も、みんなの輪の中に入りたいと思ってるんじゃないんですか?」

「私は管理人です。住人のみなさんと慣れあっては、けじめがつかなくなります」

俺はその言葉に胸が苦しくなった。

「住人のみんなが情事を楽しんでいるのに、京子さんは一人自分を慰めているだけ。そんなの切なすぎます」

オレはそう言って、少し強引に京子さんを抱き寄せた。

「もっと自分に素直になりましょう」

そしてオレは京子さんにキスをした。

彼女の体から力が抜けていくのがわかった。

唇が離れると

「男の人とキスしたのは、10年ぶりです」

そう言って彼女は、恥ずかしそうに顔を伏せた。

オレもプロとしか経験がなく、実はこれがファーストキスだった。

「亡くなった旦那さんに、操を立てられていたんですね。

でもいつまでもこんなことじゃ、きっと天国の旦那さんも心配してますよ」

本当は、彼女も寂しかったのだ。

そして誰よりも、あの輪の中に入りたかったにちがいない。

「ぼくと京子さんで、新しいくらす荘をつくりましょう」

オレがそう言うと、それまで彼女をまとっていた毛布が、自然と下に落ちた。

桜の下で

こうしてくらす荘では、男女8人でパートナーをシェアしあうことになった。

もちろん偏らないように、平等に4人がローテーションするシステムだった。

管理人さん公認になったことで、一馬さんが

「いちど8人で、このリビングでしてみたいな」

と提案したが、管理人さんは

「風紀が乱れますから」

と言って却下した。

「京子さんは堅いわねえ」

と双葉さんが残念そうに言った。

しかし管理人さんも、まったく興味がなかったわけではない。

しばらく考えて

「月に1回ぐらいならいいかも」

そう言って、くらす荘では、毎月一日がパーティーの日になった。

Youtubeでも配信中

実はYoutubeでは収益が停止されています。

つまりいくら再生されてもお金が入ってこないのです(涙)

直接的な描写はないのに、Youtubeの規約がだんだんキツくなってきて、この程度でも収益を止められます。

でもこのくらす荘は、自分でも好きな作品なので、みなさん、どうか楽しんでください。(作者 梶田檸檬)

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